昇平てくてく日記4

高校編

〔23〕ついに原因究明!

9月19日(月)
 敬老の日で祝日。
 高校時代の友人が福島まで来るというので、福島駅で会った。「ぼくも行きたい」と言うので、昇平もお伴。一緒に昼食を食べた後、私たちがしゃべっている間、昇平は駅ビルのゲーセンや書店などで遊んでいた。「どうぞ二人でゆっくりしゃべってください」と言ってレストランを出て行く昇平に、へぇ、と思ったりした。
 夜になって疲れが出て不安定になってきたが、自分でコントロールして抑えていた。

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9月20日(火)
 フリースクールの日。
 台風15号接近中で雨が降っているので、駅まで車で送迎した。ところが、行きの電車から降りるときに車内に傘を忘れてしまって、あわてて私に電話をかけてきた。福島駅に連絡して、電車が到着したところで確認してもらったら、忘れた場所にちゃんと残っていたので、フリースクールのある駅まで戻してもらって、昇平が自分で受け取りに行った。
 やっぱり忘れ物が増えてきている。忘れてしまうのはある意味どうしようもないから、忘れにくくする努力と、忘れてしまったときの対処法を覚えていって、自分一人でも処理できるようになっていってほしいな、と思っている。

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9月21日(水)
 台風15号通過中。ものすごい雨!!!
 電車が全線運休になってしまったので、フリースクールまで私の車で送迎した。
 川の近くを通りかかると、怖いくらいに水かさが増えている。ここは内陸だから津波の心配はないし、崖崩れを起こすような山も我が家の近くにはまったくないけれど、阿武隈川を始めとする川が身近にあるから、洪水はとても怖い場所。幸い堤防は持ちこたえてくれたが、私の実家がある郡山市では川沿いの低い場所で浸水して、かなりの被害が出てしまったらしい。
 地震、津波、猛暑、台風と豪雨。今年は本当に自然災害がひどい。

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9月22日(木)
 今日も終日電車が運休だったので、また昇平をフリースクールまで送迎した。
 フリースクールでは小耳に挟んだ友だちの会話がきっかけで、過去の嫌な記憶を思い出して、小パニックやかんしゃくを起こしたらしい。久しぶりで、しょんぼりと帰宅してきた。
 人の中で生きていくということは、外からさまざまな刺激が入ってくるということ。それとうまく付きあっていく方法こそを、昇平は覚えていかなくちゃいけない。フリースクールはそういう人生勉強をしていく場所、と私は考えている。
 夜になって落ち込んできたが、パソコンを停め、チラシを見たり好きな話をしたりして、気持ちを切り替えていた。

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9月23日(金)
 台風は過ぎたけれど、台風一過の青空とまではいかなかった。終日曇り空。涼しい。
 彼岸の中日なので、昇平と一緒にお墓参りに行き、その後、おはぎを買って帰宅した。午後は一緒にポケモンカードでバトル。カードの種類が増えてきたので、お互い頭を使って作戦を立てるようになってきた。

 台風15号の被害は本当にすさまじい。震災の被害がひどかった地域に、また土砂崩れや洪水の被害。天災だからしかたないとはいえ、テレビで映像を見るたびに胸が痛む。

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9月24日(土)
 ようやく秋晴れの空が広がった。風も弱くて、最高のお天気。あまり気持ちがいいので、昇平と一緒に公園へ散歩にいった。写真を撮りながら2時間近く歩いて、良い運動になった。
 写真はブログ「そっと、ひとりごと」にアップ。昇平も自分のブログに散歩のことを書いていた。

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9月25日(日)
 今日も昨日に引き続き、気持ちのよい青空だった。
 地元の小学校の校庭で、小学校と幼稚園と町内会の合同運動会が行われた。毎年この時期にあるのだけれど、今年は放射線の影響を心配して午前中だけで終了。幼稚園児は参加しないし、演目も間引いて少なくなっていた。私は行かなかったが、参加した義父母に聞くと、参加者も例年より少なかったらしい。今年は本当に特殊な年なんだと、改めて思った。

 昇平は日中は元気に過ごしていたが、夕方から急に落ち込み始めて不安定になり、自分で制御できなくなって、夕飯の支度をしている私のところへやってきた。話しているうちにパニックになってきたが、それでもいろいろ聞いているうちに、彼が一番嫌な記憶として忘れられずにいることが、ネットの「アンサイクロペディア」の内容だったことが判明した。ネット百科事典「ウィキペディア」のパロディサイトだけれど、ご存じの通り、見た目は本当にウィキそっくりに作ってあるし、書かれている内容も、限りなく本当っぽく聞こえる嘘やジョークばかり。昇平にはその真偽が判別できなくて、書かれていたことを「本当のこと」と信じ込んだために、混乱して不安になってしまったのが、もう一年も前のこと。そうだったのか!
 私がアンサイクロペディアを知っていると言うと、昇平の方が驚いていた。自分しか知らないサイトだと思って、恐怖や不安から口に出さないようにしていたこともわかった。もっと早く言ってくれていたら、もっと早く誤解を解いてあげられたのにね……。

 それでも、昇平はアンサイクロペディアの内容を、本当のことと固く思い込んでいる。さて、どうやって誤解を解いたものか、と考えて、アンサイクロペディアとウィキペディアに掲載されている、アンサイクロペディアの説明を見せることにした。そこを読めば、ちゃんと書いてある。「このサイトの記事や情報は嘘八百です」と。
 嘘を本当らしく語って楽しむ人がいる、ということ自体が、昇平にとっては驚きだったのだが、「ぼくやぼくの家族はみんな真面目だから、めったに嘘はつかないけれど、世の中にはいろいろな人がいるんだ」という形で、受け入れることにしたようだった。自閉特有のこだわりのために、一度記憶に深く刻み込まれた記憶は、なかなか修正できないけれど、それでも、思い出すたびに「ぼくが思い出していることは嘘なんだよね」と言って、記憶の修正にチャレンジしていた。
 その後も精神的には不安定で、夜中の12時過ぎまで眠れないでいたが、この日記を書いている月曜日には、だいぶ修正も進んだようで、落ち着いた様子になっている。

 自閉を持つ子は偏った認識や誤解からトラブルを起こすことが多いから、その元を突きとめて誤解を解きほぐしてあげるのが大切だ、と先輩お母さんたちからたびたび聞かされていたけれど、なるほど、これか、と思った出来事だった。

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☆昇平のブログ→ 「Dark Silver Zone」
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[11/09/26(月) 21:42]

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