昇平てくてく日記

幼児〜小学校低学年編

遠足


木曜日、昇平は遠足だった。
4年生の行き先は、地域の下水道処理施設。阿武隈川のほとりにあるのだが、そこまでは何と片道5.5kmの道のり。そこを自分たちの足で歩いていって、施設を見学して(社会科の内容を兼ねている)、昼食を食べ、また5.5kmの道のりを歩いて帰ってくる、というもの。さて、どんな遠足だったかというと・・・

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昇平は、協力学級でもゆめがおかでも社会科を学習していない。なので、数日前から、ドウ子先生と一緒に見学に向けて下調べが始まっていた。
下水道をきれいにして川に放流する、というしくみそのものは、昇平にも十分理解できることだったので、「目で見て分かるように説明してやれば、きっと大丈夫だと思います」と私も先生に言っていた。
さて、どうやって視覚的に理解させようか・・・とドウ子先生が考えていると、ふと、隣の席でDくんがあおいでいる下敷きが目に入ったそうだ。Dくんは5年生。去年同じ処理施設に見学に行って、そこでもらった下敷きを大切に使っていたのだ。下敷きには、施設の設備の絵と名称が書いてある。
「これだ!」とひらめいたドウ子先生は「Dくん、ちょっとその下敷きをかしてね!」と言うと、だーっと職員室に走って拡大コピーを2枚作り、そのうちの1枚は名称をホワイトで消して書き込めるようにして、「昇平くん、施設にあるものの名前を、お手本を見ながらこれに書いていこう」と言ったのだという。施設のマスコットキャラクターの鳥の絵もコピーで入れて、昇平に色を塗らせ、実際に見学に行った時に「あ、あのキャラクターがいた!」と昇平が関心を持てるようにしてくれた。
私が、ドウ子先生を見ていて「すごいな」と感心するのは、こういう目の良さと行動力。「これは使える」と思ったものは、すばやくゲットして、すぐに実行に移すのだ。

遠足の下調べに関しては、こんなエピソードもある。
水質美化に関する本を図書館から借りて読んでいた昇平が、ふと「これ、やってみたいなぁ」と言いだしたという。泥水をしばらくおいておくと、沈殿して水がきれいになる、という絵か写真があったらしい。「よし、それじゃやってみよう!」とドウ子先生。すぐさまビーカーを借りてきて、そこに校庭の土と水を入れてかき混ぜ、「明日の朝、きれいになっているかどうか見てみてね」。それが、上の写真なのだけれど、本当に泥はビーカーの底に沈殿し、水が澄んできていた。処理施設には、汚泥を沈殿させる「沈殿槽」というものがあるのだが、それを自分の目でばっちりと理解したのだった。

処理施設で処理される下水にはどんなものが入っているか、ということも、ドウ子先生と予備学習した。「お風呂の水」「台所の水」「昇平くんがトイレでしたウ○チが入っている水」「昇平くんが気持ち悪くなって、”ゲー”した時の水・・・」。昇平は、こういう言い方が非常に好きなので、大受けしていたのだという。
これを聞いた時、私は「勘のいい先生だなぁ」とつくづく思ってしまった。先生に対してこんな言い方は失礼かもしれないけれど、昇平にどういうふうに言ったり示したりすると理解しやすく、また興味を持つかを、素早く的確に見抜いていると感じたのだ。まだ昇平と出会ってわずか3週間しか経っていないのに・・・。
ちなみに、見学中には、本当に「処理施設ではどんな水が処理されるか?」という質問があったのだそうだ。子どもたちが「トイレの水」「台所の水」「○○の水」と答える中、昇平も元気に手を挙げて、「はいはい! ”ゲー”の水です!!」と答えたという。・・・予想通りね。(笑)

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遠足の当日は天気も上々。良すぎて本当に暑いくらいの日になった。
昇平はYくんという男の子と並んで歩いた。ドウ子先生も一緒にいったのだが、顔を見ると、とたんに弱音を吐きそうになるので、先生の方で「はい、Yくんと一緒に歩いてねー」と先を行かせたのだという。うん、甘えっ子の昇平に、それは大正解。(笑)

見学先では、下調べのおかげで、非常に関心を持って話を聞いていたのだという。ただ、職員の方は全体に向かって説明をするので、昇平にはその話はちょっと分かりにくい。そこで、サブについていた職員の方をつかまえ、その人の腕に自分の腕を絡めて(自分専用?)、疑問に思ったことをいろいろ聞いていたのだという。よく、そういう場面では、職員の説明など聞かずに端のほうでうろうろしている子がいるけれど(実は私がそういう子どもだった)、昇平はばっちりいろいろなことを聞けたらしい。
スクリーンに汚泥を分解する微生物の写真が映し出された時には、大興奮して「うわーー、すげーーー!!」と声を上げ、見学のしおりに熱心にスケッチしていたのだという。実際、持ち帰ってきたしおりには、6種類の微生物の名前と形がしっかり書き込まれていた。処理施設の見取り図も描いてある。なぜかカービィまで解説に登場しているのが、いかにも昇平らしくて笑えた。
何のために下水処理施設があるのか、どんな仕組みで水をきれいにしているのか。しっかり理解できて、充実した見学になったようだ。

帰り道はますます暑く、水筒の水もすっかり飲みきってしまって、残った氷をかじりながら帰ってきたらしい。昇平が氷を出すのに立ち止まるたびに、Yくんは一緒に立ち止まって待ち、それが終わると昇平に「○○バズーカ発進! 3,2,1,ゴー!」と言って、ダッシュで先に行った列を追いかけてくれたという。昇平がへばってきた時には、さりげなくリュックサックを下から支えてくれたり、といろいろ面倒も見てくれたらしい。学童で一緒だっただけに、昇平のことが分かっていたんだね。Yくん、本当にありがとう。

昇平を理解してくれるお友だちと、ドウ子先生の熱心な指導のおかげで、昇平は充実した見学学習をし、往復11kmの道のりを音を上げることもなく歩ききった。家に帰ってきてからも、昇平は元気だった。体力がついてきただけでなく、それだけ楽しかったからだろう。
すてきな遠足で、本当によかったね、昇平。

[05/04/30(土) 15:01] 学校

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